特別栽培について
■ テーマは西洋医学と東洋医学の融合
いきなり農業とは離れた医学の見出しをつけていますが、最後にはご理解いただけるよう、これから説明をさせていただきます。内容に触れる前に、まずは農薬・化学肥料の使用有無による栽培方法の分類をまとめましたのでご覧ください。
- 『慣行栽培』:病虫害の駆除・防除および除草のために農薬を使用し、生育促進および収量増加のために化学肥料を使用する栽培方法
- 『有機栽培』:農薬や化学肥料、遺伝子組換え技術を利用せず、環境への負荷をできるかぎり低減した方法で行われる栽培方法
- 『特別栽培』:その生産地域の慣行レベルと比較して、節減対象農薬を半分以下の使用回数で、かつ化学肥料の窒素成分量を半分以下にとどめて栽培する方法
結論から申し上げますと、茶屋ファームでは『特別栽培』を方針としています。以下に、植物としてのそばの特性と考え合わせながら、当ファームの栽培方針を細かくご説明していきます。
◇ そば栽培における農薬の要否
まず、そばは病気に強いので病気対策の農薬は必要ありません。
次に、上の写真の畑は除草剤を全く使っていませんが、そばが畑を完全に支配しています。初期成育がうまくいけば雑草を凌駕してスクスクと成長する上、そばの根っこからは他の植物の発育を阻害する物質が出ることもあって除草剤を使う必要もありません。
懸念すべきは1点。ヨトウムシ(夜盗虫)です。文字通り夜行性で、昼間は土の中に潜み、夜になると出てきて葉を食べ尽くします。被害にあった植物はほとんど枯れてしまうため、壊滅的な状況になる前に農薬を使用して対処する予定です。
ありがたいことに、利賀村において「そばがヨトウムシにやられた。」という話はこれまで聞いたことがありません。結果として農薬を使わずに済んでいます。このまま無農薬を継続したいというのが切なる願いです。
◇ そば栽培における化学肥料の要否
そばは痩せた土地でも育ちますが、収量を増やそうと思えば肥料は必要です。ただ当ファームでは化学肥料は使わないようにしています。理由のひとつは倒伏防止です。化学肥料が効いて伸びすぎてしまうと倒れやすくなってしまいます。
そばの茎は細くてヒョロヒョロです。根っこの深さもせいぜい20cm程度なのにも関わらず、人の背丈くらいまで伸びることもあります。平時であっても「よく自分の身体を支えていられるな。」と不思議に思うことがあるくらいなのに、ましてや強風が吹こうものなら。
施肥量をコントロールすればいいだけの事ではありますが、土づくりと食味向上という理由からも化学肥料は使わないつもりでいます。と言っても化学肥料がダメだという話では決してありません。
化学肥料は、任天堂の大人気ゲーム『マリオカート』におけるクッパのようなものです。最速だけど操作しづらい。効きすぎるが故に施肥量のさじ加減が難しいのです。要するに当ファームの技術・経験の無さの話です。
◇ 化学肥料が土壌と食味に及ぼす影響
土づくりと食味向上について、もう少しだけ掘り下げます。化学肥料の過度な使用は土壌の塩分濃度を上げ、根圏環境を悪化させる可能性があります。ついでに農薬についても言えば、土壌中の微生物や昆虫に悪影響を及ぼして土壌の質を下げる原因となります。
食味に関しては、過剰な窒素肥料は野菜の甘みや香りを減少させることが知られています。あくまで過剰な場合です。そして素直に申し上げますと、そばにおいても同様なのか客観的なデータを持ち合わせてはいません。同じことが当てはまるのではないかという推測に基づきます。
■ まとめ
慣行栽培と有機栽培の関係は、西洋医学と東洋医学の関係に似ていると考えています。西洋医学は悪い部分を手術や薬で除去する事を治療としており、東洋医学は自然治癒力を高める事や病気の予防が治療のメインとしています。
両者は「一方が優れていて、もう一方は劣っている。」というものではなく補完し合える関係にあると思っています。基本として東洋医学的に健康的な土づくりを行い、そばにはスクスクと育ってもらう。とにかく健康でいてもらうこと。それでも伝染・拡散してしまうような病虫害に遭えば、被害を最小限に抑えるために西洋医学的な対処を施すつもりでいます。
繰り返しになりますが、当ファームは現状では無農薬・無化学肥料でそばを栽培しています。ただ必要に応じて農薬を使う想定でいる以上、とても厳格な基準の有機JASの認定は目指さずに、特別栽培を方針としている状況です。
皆様に安心して美味しいそばを召し上がっていただけるよう努力していきたいと考えております。